静脈内鎮静法の薬剤とは?プロポフォールとミダゾラムの特徴を歯科医が解説
- ホーム
- 歯科治療に関する情報ブログ
- 静脈内鎮静法
- 静脈内鎮静法の薬剤とは?プロポフォールとミダゾラムの特徴を歯科医が解説
歯科治療が苦手な方のために、当院では「静脈内鎮静法」を取り入れています。診察の際、「どんな薬を使うのですか」とお尋ねいただくことがありますので、今回はその中身をお伝えします。
静脈内鎮静法という治療で
使われる薬剤の役割

静脈内鎮静法とは、点滴から薬剤を投与し、うとうととまどろむような状態を作る治療法です。全身麻酔と違って意識が完全になくなるわけではなく、呼びかければ反応できる状態を保ちながら、恐怖心や緊張を和らげていきます。
どの薬剤をどのくらい使うかは、担当する歯科医師や麻酔科医が治療内容を見ながら判断します。同じ「静脈内鎮静法」という名前でも、実際に選ぶ薬の組み合わせは患者さんごとに違うのです。
抜歯や外科的な処置では、痛みそのものより、器具の音や振動に強い不安を感じる方をよく見かけます。局所麻酔と組み合わせれば、痛みも不安も同時に和らげることができます。
診療室でドリルの音を耳にしただけで体がこわばってしまう方を、これまで何人も診てきました。そうした方にこそ、静脈内鎮静法は治療への負担を大きく減らす選択肢になると考えています。
静脈内鎮静法の薬剤
ミダゾラムが持つ特徴

ミダゾラムはベンゾジアゼピン系に分類される薬剤で、血管への刺激が少なく、比較的早く効果が現れます。導入時の鎮静薬として、当院でも頻繁に用いています。
抗不安作用や鎮静作用のほかに、前向性健忘という働きも備わっています。これは、投与した後に起きた出来事が記憶に残りにくくなる作用です。処置中の記憶がおぼろげになるのは、主にこの作用が関わっています。
使用量の目安と根拠
日本麻酔科学会が示す使用指針では、成人にはミダゾラム0.02〜0.03mg/kgをできるだけゆっくり注入するとされています。mg/kgとは体重1kgあたりの薬の量を表す単位で、体重60kgの方なら1.2〜1.8mg程度が目安になる計算です。
一定量を超えると、それ以上は効果が強まらない天井効果があるので、単独で長時間の鎮静を保つには不向きです。効果を打ち消す拮抗薬フルマゼニルも準備しており、想定外の反応が出た際にはこれで対応します。
静脈内鎮静法の薬剤
プロポフォールが持つ特徴

プロポフォールという名前を聞いて、海外の著名な歌手が使用中に亡くなった出来事を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。本来は全身麻酔を維持するための静脈麻酔薬で、中枢神経の働きを抑えて眠りに近い状態を作り出します。
同学会のガイドラインでは、局所麻酔中の鎮静として0.5mg/kgを3〜5分かけて投与したあと、1.5〜4.5mg/kg/hr程度で持続的に投与するという目安が示されています。mg/kg/hrは、1時間あたり体重1kgにつきどれくらいの量を使うかを表す単位です。
投与をやめると比較的早く覚醒へ向かうため、鎮静の深さを細かく調整しやすいという長所があります。処置の進み具合を見ながら量を加減できるこの「切れの良さ」を、私たち歯科医師は頼りにしています。
一方で、単独での健忘効果はミダゾラムほど強くありません。点滴した瞬間に血管の痛みを訴える患者さんもいるため、投与する速さには気を配っています。
静脈内鎮静法における薬剤の
組み合わせと使い分け

治療時間や体質に応じた調整
実際の診療では、ミダゾラムを少量先に投与し、そのあとプロポフォールを持続的に投与する流れをよく選びます。こうすることでプロポフォール投与時の血管痛が和らぎ、健忘効果も得やすくなります。
治療にかかる時間、体質や持病、これまでの麻酔経験の有無によって、必要な薬剤の量や組み合わせは変わってきます。持病がある方については、ASA-PSという全身状態を分類する基準を参考にしながら、鎮静の可否や体制を判断することもあります。
お酒に強い方は薬剤の効きをやや弱く感じることがあり、逆に高齢の方は少量でもしっかりと効くことが少なくありません。年齢や体格だけでなく、こうした個人差も踏まえたうえで量を決めています。
静脈内鎮静法の薬剤選びと安全管理の工夫
鎮静中は血圧や脈拍、血液中の酸素飽和度といったバイタルサインを、パルスオキシメーターなどの機器で数分おきに確認しています。ガイドラインでも血圧測定は少なくとも5分に1回行うことが求められており、当院もこの基準に沿って管理しています。
薬剤は最初から必要量をまとめて入れるのではなく、反応を確かめながら少しずつ足していく「滴定投与」という考え方で調整します。同じ量を使っても効き方には個人差があるので、呼吸や意識レベルの変化を見ながら、効きすぎのサインが出ればすぐに投与を止めます。
処置後は、意識状態や呼吸、血圧などが鎮静前の状態に戻ったことを確認してから、帰宅していただく流れになります。
薬剤の特徴を知っておくと、鎮静中に体の中で何が起きているのか、イメージしやすくなるはずです。使う薬について気になる点があれば、治療前の診察でいつでもお尋ねください。

WEB予約
