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根管治療

根管治療で歯を残す

根管治療で歯を残す

根管治療は、虫歯が深く進行して歯の神経にまで達した場合や、神経が死んでしまった場合に行う治療です。「歯の神経を取る治療」として知られていますが、正確には、感染した神経を除去し、根の中を徹底的に清掃・消毒して、再び細菌が入らないように密封する処置を指します。この治療により、抜歯を避けて自分の歯を残すことができます。

当院では、精密な診査と丁寧な処置により、可能な限り歯を保存する根管治療を提供しています。

根管治療が必要となる状態

根管治療が必要となる状態

歯髄炎と根尖性歯周炎

歯の中心部には「歯髄」と呼ばれる組織があり、神経や血管が通っています。虫歯が進行して歯髄に細菌が達すると、「歯髄炎」という炎症が起こります。

歯髄炎の症状は、冷たいものや温かいものがしみる、何もしなくてもズキズキと激しく痛む、夜間に痛みで眠れないなどです。歯髄は硬い歯に囲まれた狭い空間にあるため、炎症による腫れの逃げ場がなく、強い痛みを引き起こします。

歯髄炎を放置すると、やがて歯髄が死んでしまい、一時的に痛みがなくなります。しかし、細菌は根の先端に向かって進み、根の先の骨の中に感染が広がります。これを「根尖性歯周炎」と呼びます。根尖性歯周炎では、歯を噛み合わせると痛い、歯が浮いた感じがする、歯茎が腫れる、顔が腫れるなどの症状が現れます。重症化すると、発熱や強い痛みを伴い、顎の骨を溶かしてしまうこともあります。

外傷による歯髄損傷

事故や転倒などで歯を強く打った場合、外見上は問題がなくても、内部の歯髄が損傷していることがあります。

打撲の衝撃によって歯髄の血管が切れると、歯髄への血液供給が途絶え、徐々に歯髄が壊死します。受傷直後は症状がなくても、数週間から数か月後に歯が変色したり、根の先に膿が溜まったりすることがあるため、外傷を受けた歯は定期的な経過観察が重要です。

根管治療の流れ

診査と診断

根管治療の流れ

根管治療を始める前に、レントゲン撮影を行います。レントゲンで、虫歯の深さ、根の形態、根の数、根の先の骨の状態などを確認します。歯によって根の数は異なり、前歯は通常1本、小臼歯は1〜2本、大臼歯は2〜4本の根があります。また、根の形は複雑に曲がっていることもあり、治療の難易度に影響します。

症状や検査結果をもとに、歯髄が保存できるか、根管治療が必要かを判断します。歯髄炎が軽度で一部の歯髄が健康であれば、「部分断髄」という歯髄を一部残す治療を行うこともあります。しかし、炎症が歯髄全体に及んでいる場合や、すでに歯髄が死んでいる場合は、完全な根管治療が必要です。

感染源の除去と根管の清掃

感染源の除去と根管の清掃

治療は局所麻酔下で行います。まず、虫歯の部分を削り、歯髄腔(神経の入っている空間)を開きます。次に、「ファイル」と呼ばれる細い針のような器具を使って、感染した歯髄や細菌に汚染された象牙質を除去します。根管の壁を削りながら、徐々に太いファイルに替えて、根管を拡大していきます。

根管の清掃中は、消毒液で洗浄を繰り返し、細菌や汚れを洗い流します。根管は非常に細く複雑な形状をしており、完全に清掃するには高度な技術と時間が必要です。特に、根管の側面に枝分かれした「側枝」や、根の先端近くの複雑な形態は、完全に清掃することが困難です。そのため、根管治療は複数回の通院が必要となります。

根管充填と土台の構築

根管充填と土台の構築

根管内が清潔になり、症状が改善したことを確認したら、「根管充填」を行います。これは、清掃した根管内に「ガッタパーチャ」というゴム状の材料と、シーラーと呼ばれる糊のような材料を詰めて、根管を密封する処置です。隙間なく緊密に充填することで、細菌が再び根管内に侵入するのを防ぎます。

根管充填後、歯の強度を回復させるために「支台築造」を行います。神経を取った歯は、栄養供給が断たれるため脆くなっています。そのため、根管内にピンや土台を立て、その上に被せ物を装着するための形を作ります。土台の材料には、金属やファイバー強化樹脂などがあり、歯の状態や被せ物の種類に応じて選択します。

被せ物の装着

被せ物の装着

土台ができたら、歯全体を覆う「クラウン(被せ物)」を装着します。神経を取った歯は、噛む力によって割れやすいため、クラウンで歯全体を保護する必要があります。クラウンの材料には、保険適用の金属やプラスチック、自費診療のセラミックやジルコニアなどがあります。

根管治療から最終的な被せ物の装着まで、通常3〜6回程度の通院が必要です。治療期間は、根の感染の程度や治癒の状態によって異なりますが、1〜2か月程度かかることが一般的です。

根管治療後の注意点

根管治療後の注意点

治療後の経過と再発リスク

根管治療後、一時的に痛みや違和感が生じることがあります。治療によって根の先の組織が刺激されたり、炎症反応が起こったりするためです。通常、数日から1週間程度で落ち着きますが、痛みが強い場合や長引く場合は、歯科医院に連絡してください。

根管治療の成功率は、初回治療で80〜90%程度とされていますが、複雑な根管形態や重度の感染では、治癒が得られないこともあります。また、治療後に再び細菌感染が起こる「根管治療の失敗」もあります。主な原因として、根管の清掃が不十分だった、複雑な根管形態で清掃できない部分があった、被せ物の適合が悪く隙間から細菌が侵入した、歯にひびが入ったなどが挙げられます。

長期的なケアの重要性

神経を取った歯は、痛みを感じないため、虫歯や歯周病が進行しても気づきにくくなります。そのため、定期検診でのチェックが特に重要です。レントゲン撮影で根の先の状態を確認し、再感染の兆候がないかを評価します。

また、神経を取った歯は経年的に変色することがあります。これは、歯の内部の象牙質が変性するためです。前歯など見た目が気になる場合は、セラミッククラウンで審美性を回復することができます。

根管治療を行った歯でも、適切なケアと定期的なメンテナンスによって、10年以上、場合によっては一生涯使い続けることが可能です。毎日の丁寧なブラッシングと、定期検診での専門的なケアを継続することが、治療した歯を長く保つための鍵となります。

よくある質問(Q&A)

Q.根管治療は痛いですか?
A.治療中は局所麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。
治療後に一時的な痛みや違和感が生じることがありますが、処方される鎮痛剤で対応できる程度です。ただし、強い炎症がある場合は麻酔が効きにくいことがあるため、痛みが強い場合は事前にお伝えください。
Q.根管治療の途中で通院をやめるとどうなりますか?
A.治療を中断すると、根管内に残った細菌が増殖し、感染が悪化します。
最悪の場合、歯を残すことができず抜歯が必要になることもあります。また、仮の蓋が取れると、唾液中の細菌が根管内に入り込み、治療が振り出しに戻ります。根管治療は複数回の通院が必要ですが、最後まで治療を完了することが非常に重要です。
Q.神経を取った歯はどのくらい持ちますか?
A.適切な治療と定期的なメンテナンスを行えば、10年以上、あるいは一生涯使い続けることも可能です。
ただし、神経を取った歯は脆くなるため、強い力がかかると割れるリスクがあります。被せ物でしっかり保護し、歯ぎしりがある方はナイトガードを使用することで、長持ちさせることができます。
Q.根管治療をした歯が再び痛くなることはありますか?
A.はい、再感染や新たな問題が生じると、痛みが出ることがあります。
被せ物の下で虫歯が進行した、根にひびが入った、根管治療では清掃できなかった部分に細菌が残っていたなどの原因が考えられます。痛みや腫れが生じた場合は、早めに受診してください。再治療や、場合によっては外科的な処置が必要になることもあります。
Q.根管治療の費用はどのくらいかかりますか?
A.保険診療の場合、根管治療自体の費用は、歯の種類(前歯、小臼歯、大臼歯)や根の数によって異なりますが、3割負担で数千円程度です。
これに土台の費用、被せ物の費用が加わります。保険適用の被せ物であれば、合計で1万円〜1万5千円程度が目安です。セラミックなど自費診療の被せ物を選択する場合は、別途費用がかかります。

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