まずはタイトルにも掲げた歯みがきです。
汚れを落としたい一心で強くこすると、歯茎が下がり、歯の根もとが削れて溝のようにえぐれていきます。これが楔状欠損(けつじょうけっそん)です。冷たい水がしみるのは、その溝が知覚過敏を起こしているサインかもしれません。
力はほとんど要りません。鉛筆を持つように軽く握り、小刻みに動かす。それだけで汚れは十分に落ちます。
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「歯みがきで歯が傷むことなんてあるんですか」。こう驚かれる患者さんは、本当に多いんです。ていねいに磨いているつもりが、かえって歯を削っていた。そんなケースは少しも珍しくありません。歯をもろくする引き金は、虫歯のほかにもあちこちに隠れています。
歯のいちばん外側を覆うエナメル質は、人の体で最も硬い組織です。ところが頑丈なだけではなく、酸にさらされたり、強い力が何度もかかったりするうちに、少しずつ削れていきます。
歯を弱らせるのは、虫歯菌だけではありません。その原因は、意外と身近なところにひそんでいます。まずは、毎日くり返している習慣からです。
自覚がないまま続いている癖ほど、影響はじわじわ積み重なります。

まずはタイトルにも掲げた歯みがきです。
汚れを落としたい一心で強くこすると、歯茎が下がり、歯の根もとが削れて溝のようにえぐれていきます。これが楔状欠損(けつじょうけっそん)です。冷たい水がしみるのは、その溝が知覚過敏を起こしているサインかもしれません。
力はほとんど要りません。鉛筆を持つように軽く握り、小刻みに動かす。それだけで汚れは十分に落ちます。

眠っている間の歯ぎしりや、集中したときの食いしばり。この時歯には、自分の体重に近い力がかかることがあります。
朝に顎がだるい、歯の先が平らにすり減っている。そんな心当たりがあれば、すでに影響が出ているのかもしれません。放っておけば、ひびや欠けの引き金になります。

炭酸飲料や柑橘類、お酢などに含まれる酸は、エナメル質をそのまま溶かしてしまいます。
虫歯菌は関係なく、酸そのものが歯を薄くしていく現象で、酸蝕症(さんしょくしょう)と呼ばれます。体によかれと毎日とる果実酢やスポーツドリンクが、思わぬ落とし穴になることもあります。

たばこに含まれるニコチンには、血管を縮める作用があります。歯茎に流れる血液が減るため、歯周病が進んでいても出血などのサインが出にくくなります。
痛みもないまま骨が溶け、気づいたときには支えを失っていた、という方もいます。
外から見えない体の中の変化も、歯のもろさに大きく響きます。

歯周病は、歯と歯茎のすき間にひそむ細菌が、歯を支える骨を少しずつ溶かしていく病気です。
困るのは、痛みという分かりやすい合図が出にくいこと。本人が気づかないうちに進み、歯がぐらつき、やがて抜けてしまいます。日本の成人が歯を失う原因の上位を占めています。

唾液は、口の中の酸を打ち消し、溶けはじめた歯を補修するなど、地味ながら大切な役目を担っています。加齢や口呼吸、服用中の薬で量が減ると、この働きが追いつかなくなります。
口の渇きが気になる方は、水分をこまめにとり、できるだけ鼻で呼吸するよう心がけてみてください。

糖尿病があると歯周病は進みやすく、逆に歯周病が血糖の管理を乱すこともあります。血圧の薬など、唾液の分泌を抑える薬も珍しくありません。口の中の健康は、体全体の状態と地続きなのだと感じます。

原因がこれだけ幅広いと、対策も一つでは足りません。とはいえ、難しく考えなくて大丈夫です。酸の強いものを口にしたら水でゆすぐ、磨くときは力を抜く。この小さな積み重ねが、じわじわ効いてきます。
そして、自分では気づけない変化を見つけるには、やはり「定期検診」が頼りになります。痛くなってから来られる方ほど、治療は大がかりになりがちです。何もなくても半年に一度顔を見せていただくのが、遠回りのようで近道だと感じています。