ドライソケットを防ぐうえで特に重要なのが、うがいの仕方です。術後24〜48時間は、ブクブクと強くうがいをしないようにしてください。
水を口に含んで静かに吐き出す程度にとどめてもらえれば十分です。
ストローも数日間は避けてください。吸引のときに口の中に生まれる陰圧(内側に向かう圧力)が、血餅をはがしてしまうことがあります。「いつも通りのうがい」が思わぬトラブルの引き金になることがあるので、この点はしっかり覚えておいてください。
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「親知らずを抜いた方がいい」と言われたのに、なかなか踏み出せないこの気持ちは、決して過敏ではありません。親知らずの抜歯は、通常の虫歯治療とは処置の性質がまったく異なります。
親知らず(第三大臼歯)は口の奥の一番端に位置しており、日本人の場合、顎の骨の中に完全に埋まった「完全埋伏歯」や、横向き・斜めに傾いた「水平埋伏歯」が非常に多く見られます。
こうした生え方では、歯茎を切開して骨を少し削り、必要に応じて歯をいくつかに分割しながら取り出すという手順が必要になります。
虫歯治療のように「削って詰める」だけで済む処置とは、根本的に性質が異なります。
埋伏した親知らずの抜歯は、状態によっては相当な時間がかかります。口を大きく開けたまま長時間維持するのは顎の関節や筋肉への負担が大きく、切削音・振動・圧迫感が続くことで精神的にも消耗しやすい状況です。
さらに「麻酔が切れたら痛いのでは」「術後に腫れてつらいのでは」という予期不安も加わります。「処置の複雑さ」「長時間の拘束」「術後への予期不安」この3つが重なるのが、親知らず抜歯の怖さの正体です。怖くて当然、と私は思っています。

静脈内鎮静法はさまざまな歯科治療に用いられますが、特に親知らず抜歯との相性が高いと感じています。理由は、先ほど挙げた3つの負担すべてに同時に作用できるからです。
切開・骨削りへの恐怖は、意識レベルが低下することでほとんど気にならなくなります。長時間の拘束による消耗は、全身の筋緊張がゆるんで顎の力みが取れるため大幅に軽減されます。
術後への予期不安は、鎮静薬の健忘作用により治療中の記憶がほとんど残らないことで和らぎます。実際に「気づいたら終わっていました」とおっしゃる患者さんが多いです。
患者さんがリラックスしている状態では、口を大きく開けたままキープしやすくなり、嘔吐反射で処置が中断されるリスクも低下します。術者側も手技に集中しやすくなるため、結果的に処置をより丁寧に進めることができます。
解剖学的に複雑な位置にある親知らずだからこそ、この点は患者さん・術者の双方にとって大きな意味を持ちます。

抜歯が終わってからが、実はケアの本番です。術後に最も気をつけてほしいのが「ドライソケット」です。
抜歯後の穴(抜歯窩)には、数時間以内に血液が固まって「血餅(けっぺい)」と呼ばれる赤いゼリー状の塊が形成されます。これが傷を細菌や外気から守り、骨や歯茎が再生するための足場になります。
ところがこの血餅がはがれると、骨が直接外気にさらされる「ドライソケット」という状態になり、数日後から激しい痛みが続くことがあります。

ドライソケットを防ぐうえで特に重要なのが、うがいの仕方です。術後24〜48時間は、ブクブクと強くうがいをしないようにしてください。
水を口に含んで静かに吐き出す程度にとどめてもらえれば十分です。
ストローも数日間は避けてください。吸引のときに口の中に生まれる陰圧(内側に向かう圧力)が、血餅をはがしてしまうことがあります。「いつも通りのうがい」が思わぬトラブルの引き金になることがあるので、この点はしっかり覚えておいてください。

麻酔が切れてくると、じんわりとした痛みが現れてきます。処方した鎮痛薬は、痛みが出てから飲むよりも、麻酔が効いているうちに飲み始めた方が効果が出やすくなります。
「まだ痛くないから」と後回しにせず、早めに服用を始めてください。
腫れは翌日から2日目にかけてピークを迎え、その後3〜5日かけて引いていくことが多いです。腫れそのものは体が治癒しようとしている反応なので、必ずしも異常ではありません。
ただし、5日以上経っても引かない、日を追うごとに悪化するという場合は、感染が起きている可能性があります。その際は遠慮なく連絡してください。
「腫れたら冷やす」というイメージが強いですが、冷やしすぎは逆効果になることがあります。
氷を直接長時間当てると患部への血流が過剰に低下し、傷の治癒に必要な細胞の働きが妨げられます。冷やすのは当日のみ、頬の外側から濡れタオル程度にとどめておくのが適切です。

親知らず抜歯への恐怖は、処置の内容を知れば知るほど「当然の反応」だとわかります。静脈内鎮静法はその怖さに正面から向き合うための選択肢です。
「怖いと言ったら大げさだと思われるかな」と気にする必要はまったくありません。まず「抜歯が怖い」「セデーションを希望したい」と伝えてください。状態に合わせた方法を、一緒に考えます。